和菓子から広がるミステリー
坂本司さん『和菓子のアン』『アンと青春』のご紹介です。
お客さんはどんな目的で和菓子を買うのでしょう…？
この物語は意味ありげな一言を残して購入していくお客さんの言葉に疑問を持ち、主人公のアンちゃんが、お店のスタッフ、彼女を取り巻く人々が、その一言を推理しながら進んでいく物語です。作者の坂本司さんはミステリー小説家、ミステリーといえば怖そうな事件が題材になりがちですが、このシリーズは和菓子を題材としています。作者様の凄いところは、和菓子の歴史や文化をはじめ、百貨店という舞台について詳しく掘り下げたているところにあります。長年和菓子の業界に浸かり、多少百貨店とのお取引を経験した僕ですが、『あるある…』以上に『へぇ～そうだったのか…』という新しい発見がたくさんありました。
和菓子店『みつ屋』（百貨店のテナント）の店長さんをはじめスタッフさんはみんな知識もありお菓子とお客様に対する愛情で溢れています。僕もお客様なら是非贔屓にしたいお店の姿です。和菓子についてわくわくしながら学び、あっという間に読み切ってしまう『和菓子のアン』『アンと青春』お勧めです。
和菓子のテキストだと思います
一年を通して季節の和菓子が登場します。どんなお菓子でどんな味がするのかが頭にぼわ～んと浮かんでくるのは作者さんの凄いところだと思います。上生菓子に限らず、朝生（あさなま）の大福・だんご・おはぎや、乾き物も登場します。お菓子の由来や冠婚葬祭をシーン、お客様とのやり取りの中から自然な感じで和菓子の説明が見事で楽しく書かれています。
物語は高校卒業後の進路に迷っている杏子（きょうこ）ちゃん。不名誉にもその体系から、先輩にアンちゃんとニックネームを付けられ親しみを込めて呼ばれています。このアンちゃん、お母さんの影響で18歳ならぬ確かな味覚を持っているのです。身長は低く少しポッチャリ型、大学に行くほど勉強ができる訳でもなく就職を探すわけでもない。ただ焦っている女の子。偶然入ったデパ地下で和菓子屋さんのアルバイトとして働き始めます。洋菓子屋さんを選ばなかったのはフリフリのカワイイ制服が似合わないよ自分で判断したから...。
春早い時期から翌年の早春（和菓子のアン・アンと青春の2冊）まで、登場するお客様が購入するお菓子を通じて、和菓子とお客様がなぜそのお菓子を必要とするのかを学ぶアンちゃん。作者の坂本司さんはミステリー小説家。単に和菓子の蘊蓄（うんちく）を書き連ねるのではなく読んでいる僕迄一緒に推理してしまうワクワク感がたまりません。
この一冊は和菓子を優しく楽しく学ぶことができる素敵な一冊です。
坂本司さんWikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9D%82%E6%9C%A8%E5%8F%B8
アンと青春
『アンと青春』は底冷えがする2月の京都旅行から始まります。『和菓子のアン』以上にミステリー的な内容が深くなります。和菓子業界の隠語のみならず和食業界の隠語や、中国の飴…さらに上司からプレゼントされた和菓子の謎を解いていく...。『みつ屋』の上司である立花さんとの恋愛に発展するのでは…と思いながらハッピーエンドを期待して読み進めるのですが、『アンと青春』ではそこまで行きません。次回作に期待します。ちょうど2冊でアンちゃんの一年が終わりました。『このままアルバイトで良いのか…』という疑問も芽生え強くなっているようです。さて、次回作…、正社員になるのか？それとも和菓子職人の道に進むのか？恋の行方…あらぬ伏兵が現れるのか…？10月22日発売の最新刊に期待が広がります。ミステリー小説だけに、僕の読みは大きく外れると思う…。外れる事を期待して次回作を待ちます。
さて、どんな展開が待っているか…？
☝10月22日に『アンと愛情』が発売されます。さて次はどんな展開が待っているのか？
以上、号外でした。ではまた…。
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